小学生の頃、教科書に載っていた向田邦子さんのエッセイが妙に頭に残っていた。戦時中、まだ字を書くことができない妹さんが、疎開先から元気なら○、元気がないなら×をはがきに書いて、家族に近況を知らせるというお話だった。家族愛の深さ、戦争の無残さを小学生ながらに感じた作品だった。
それから数年後中学生になり、学校の図書館にあった彼女の短編集“思い出トランプ”を読んで、かなりの衝撃を受けた。温かい家族のお話を描かれる方だと思っていたので、不倫を題材にした小説は、中学生の私には、あまりにも衝撃的だった。でも、ドキドキしながらも一晩で最後まで読み終えたのを覚えている。
それ以来、すっかり彼女のとりこになっている。女性のどきりとする部分を切り取る彼女の作品を読んで、女に生まれてよかったとつくづく思った。
残念なことに、昭和56年の航空機事故で51歳の若さで亡くなられている。もし彼女が生きていたならば、今現在の女性達をどう描いていたのだろうと、非常に残念に思う。でも本を開けば、今でも色鮮やかに、向田邦子ワールドが広がっている。